酪農家の方は生乳中の体細胞数を気にされることが多いと思います。ここでは体細胞について確認してみたいと思います。
体細胞とは牛の乳の中に含まれる白血球と乳腺の細胞をひとまとめにした呼び方のことです。昔は「乳中白血球」と呼ばれていましたが、食べ物に白血球という言葉はイメージが悪いということから「体細胞」と呼ぶことになりました。健康な牛の分房乳にもある程度の体細胞が含まれており、通常は乳汁1mlあたり10万個未満です。乳頭口から細菌が侵入すると白血球は細菌と戦うために感染した場所に集まります。結果として乳汁中の体細胞数が上がるので、体細胞は乳房炎を見つける目印になります。
【体細胞数が高いと何故駄目なのか】
体細胞数が高いと乳房炎の可能性が高いということは前回の投稿で説明しました。それでは乳業工場や生産者団体の視点で体細胞について考えたいと思います。
体細胞数の増加は乳腺の炎症と関連しています。乳腺に炎症が起こると血液中の塩分が乳汁中に流入するため、乳汁の塩分バランスが変わります。乳房炎の牛の乳汁を舐めるとしょっぱく感じるのはそのためです。また、乳房炎の牛の乳は乳製品をつくるために大事な成分である乳脂肪や無脂固形分、乳糖が減少します。その結果、乳製品の風味が悪くなったり、つくれる乳製品の量が減るなどのトラブルが起こり、乳業工場にとって損失となります。
生産者にとっても体細胞数が上がると乳量も下がり、乳房炎の治療費もかかるため経済的な損失が大きいです。
【体細胞数が高いと何故駄目なのか】
生産者が自分でできる乳房炎診断にはストリップカップを使ったブツの確認、CMT変法、電気伝導度測定があります。
①ブツの確認
搾乳のときの前搾り乳をストリップカップで取ってブツの有無を目で見て確認する方法です。
②CMT変法
CMT試薬と検乳を各2mlずつ専用シャーレに入れて混ぜ、凝集と色で判断する方法です。体細胞が界面活性剤と接触すると凝固する性質と炎症が起こると乳汁のミネラルバランスが変化してpHが上がる性質を利用しています。
③電気伝導度
乳房炎になると血液中のナトリウムやクロールなどのミネラルが乳汁中に入り込み、電気が流れやすくなります。この電気の流れやすさを電気伝導度と呼び、乳汁中の電気伝導度を測定することで乳房炎を早期発見することができます。
電気伝導度測定は搾乳ロボットや一部のパーラーに付属されていますが、パイプラインミルカーで搾乳している生産者でもミルクチェッカーという電気伝導度計を使えば簡単・迅速に測定することができます。